2010-08-01から1ヶ月間の記事一覧

第11回 嘉納塾3 おのれが十のものを与えて三か四をとるようにしろ

最後に、嘉納数え年54歳のときの嘉納塾の同窓会における講話である(嘉納・体系5巻52〜57頁)。 自分が今日この席で話したいと思うことはまことにたくさんあるのであるが、今日はその一つとして、塾が創立以来一貫してきた精神が今日の教育上ますます必要で…

第10回 嘉納塾2 克己の力を養う。

引き続き、嘉納塾についてみていく。「精力善用・自他共栄」を世に唱える以前であるが、嘉納が、嘉納塾の同窓会において、その教育方針などについて語った講話があることから、今回及び次回はその講話をみていく。以下、嘉納が52歳のときの講話である(嘉納…

第9回 嘉納塾1 わがまま勝手を許した家庭の子供は一身を誤る。

前回まで「嘉納はどのような人をつくとうとしたのか。」という点について不完全ながらも一応ふれてきた。そこで次は、精力善用・自他共栄という能力・態度を身につけた人をつくるため、「嘉納はどのような方法でつくとうしたのか。」という点をみていくが、…

第8回 おのれ自身の我儘を抑えて他のために尽くし得る力を養う。

第7回では「自他共栄」を便宜上3つに分けてその内容をみてみたが、第8回では「嘉納はどのような人をつくろうとしていたのいか。」という視点から、改めて「自他共栄」をみていきたい。まず前回ふれたように、自他共栄に基づく考え方や行動とは、「他人よかれ…

第7回 心の欲するところに従い、矩を踰えず。

第7回は、「自他共栄」であるが、このコンセプトは様々な場面で使用されることから、便宜上、三つに分けてみていく。 第1は、紛争解決としての「自他共栄」、第2には、道徳の説明原理としての「自他共栄」、第3は、修身の指針としての「自他共栄」である。ま…

第6回 なんとかなるわい。

「精力善用」というコンセプトは、武術から教育、仕事、衣食住、経営、読書など、ありとあらゆる場面に妥当する原理であるが、精神状態にも妥当する。つまり、如何にうまく行うか、というdoingの場面だけではなく、どんな態度、スタンスで日々を過ごすか、と…

第5回 概念の技化

「嘉納はどのような人間をつくろうとしていたのか。」 嘉納の答えは、「精力」を「善用」し、「自他」の「共栄」を図る人間であるが、第5回では、この「精力善用」についてみていく。「精力善用」とは、善を目的として心身の力を最も有効に使用することであ…

第4回 将来臍を噛んでも取返しのつかぬようなことに立至る。

精力善用・自他共栄 嘉納はいう。 自分は今までに随分いろいろの書物を読んだが、どうしても人生の真義が明確に分からなかった。そこで一時学問は全く棚に上げてしまって、実社会の研究に没頭した。そして終に社会百般のことは、皆社会生活存続発展の原理と…

第3回 ただ勝敗を主眼とする武技は維新後の時世に適せず。

第3回では、嘉納が柔道を創った目的について触れておきたい。結論を先にいうと、教育を目的とした創ったのである。 嘉納が柔術を習った理由 まず、そもそも何故、嘉納は「柔術」を習ったのか。 自分が柔術を学び、また講道館を創設するに至った動機について…

第2回 三つ児の魂百まで

嘉納の印象 数え年75歳の嘉納の印象について、インタビューをした東京文理科大学講師エイ・エフ・タマス氏は次のように話した。 嘉納師範との初対面ほどびっくりしたことは、今までにかつてなかった。貴族院議員とはいえ、柔道の源泉講道館の創設者で、その…

第1回 柔道は「良い子」を育てるか。

このブログでは、これから何回かかけて、柔道を創った嘉納治五郎師範(以下敬称略します。)を辿りながら、これからの柔道と教育について一つの試案を提示してみたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。 テーマ 本稿は教育としての柔道につい…